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カルテルはミラノそのもの -ジャーナリストの見たカルテルストーリー Vol.2

革新的な技術、デザインで世界のインテリアシーンを牽引し続けるイタリアのブランド「カルテル」。
4年ぶりに通常開催されたミラノサローネでもカルテルは注目の的。
20年以上、世界のデザイン界を取材してきたジャーナリスト本間美紀さんがその哲学を3回にわたって読み解きます。

INDEX

  1. When Kartell talks to you |カルテルーそのストアが語りかけること
  2. Fall in love with design city Milano|ミラノの街と相思相愛
  3. Celebrating Kartell’s 80th anniversary|ミラノの文化に祝福された一夜
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When Kartell talks to you

カルテルーそのストアが語りかけること


そしてカルテルのミラノフラッグシップストアは世界と会話する、コミュニケーションストアでもある。

かつてパリの街で、エルメスがショウウィンドウを商品で装い、一部の貴族のものだった高級品を、街行くすべての人に語りかけたように、カルテルのストアもまた、年間のテーマを持って、訪れる人にデザインを語る。

When Kartell talks to you

カルテルはすべての自社製品を愛し、一度世に出した製品はロングセラーに育てる。2023年のミラノサローネ中のストアは、まるで誕生日パーティを行うように2004年発表の照明「ブルジー」の20周年を祝った。

カラー違いの限定モデルやグラフィカルな店頭のプレゼンテーション。このパワーだけで圧倒されてしまう。

毎年変わる、ストアプレゼンテーションは、ミラノ中、いや世界中のカルテルファンの楽しみのひとつにさえなっているのである。

さらにカルテルの製品は、家具に留まらない。照明はもちろん花器やテーブルウェアだってつくるし、小さな壁掛けのフック、ラグ、アイウェアーまでそろう。


最新マテリアルを駆使して、暮らしのデザインを生み出すライフスタイルブランドとして認識されている。


カルテルは新しい暮らしを見据え、これからの素材でそのステージを広げている。

その一つがこの数年で種類が増え始めたソファ。フレームやカバー生地は、早い段階から環境に配慮したものを使用している。


最近ではラグなど、ソフトな素材のプロダクトも多く、住まいの全てをカルテルで装う。そんな空間も夢ではなさそう。

Fall in love with design city Milano

ミラノの街と相思相愛


カルテルはミラノ生まれのブランド。
社長のクラウディオ・ルーティもミラノを愛してやまない男である。
そんなクラウディオを、カルテルを、ミラノという街も愛している。その相思相愛ぶりは見ている方が驚いてしまうほど。

Fall in love with design city Milano


ミラノっ子なら誰でも知る老舗中の老舗バール「COVA」。かの有名なブランド通り、モンテナポレオーネ通りに店を構える。イタリアの伝統的な焼き菓子が並ぶこの店のウィンドウを、カルテル製品がジャックしているのを見る。


その背景にはこのバールのオーナーとクラウディオの長い友情を感じざるを得ない。全く違うジャンルの二つのブランドが、ミラノという街を盛り上げていこうと肩を組んでいる。


同じくモンテナポレオーネのブランド街のウィンドウに、カルテルのプロダクトと服や靴が、澄ました顔で並んでいるのも、もう当たり前の光景。
ファッション業界出身のクラウディオのアイディアだろう。


こんなふうにカルテルを通して、ミラノの街に流れるデザインへの情熱を垣間見ることがある。

クラウディオはミラノサローネ国際家具見本市のボードメンバーであり、2021年までプレジデントも務めた。


いまでこそミラノサローネ国際家具見本市は、イタリア政府、ミラノ市からの行政のバックアップを受けての開催となっているが、その原動力として当時、ミラノサローネのプレジデントだった、クラウディオ・ルーティの強い働きかけがあったことは想像に難くない。


ミラノのシンボルであるスカラ座。そのステージ上でミラノサローネ国際家具見本市の前夜祭が開かれた時、会場はカルテルの椅子「マスターズ」のゴールドバージョンで埋め尽くされた。

Celebrating Kartell’s 70th anniversary

ミラノの文化に祝福された一夜


カルテルに関しては、忘れられない一夜がある。

カルテルが創業70周年を迎えた2019年は、ミラノでもっとも格式高い場所の一つ、王宮博物館「パラッツィオ・レアーレ」がカルテルに扉を開いた。

Celebrating Kartell’s 70th anniversary

カルテルの歴代のプロダクトが、アートのように展示される特別展「ザ・アートサイド・オブ・カルテル」が、ミラノを代表する文化の一つとして、その年のミラノサローネ国際家具見市のタイミングで開催されたのだ。

そんな展覧会の中で開かれる特別なパーティに招かれた。王宮博物館の奥の特別な場所へ。

カルテルのヒット商品とも言えるコードレス照明「バッテリー」が階段に並べられ、優雅は光でゲストを導く。

宴席のテーブルはパトリシア・ウルキオラによる樹脂製のテーブルウェア「ジェリーズ」でコーディネートされたゴージャスな食卓。


その夜、クラウディオが率いるルーティ家のファミリーは、大勢のゲストがいるにもかかわらず、テーブルの一人一人へ声を掛けて回ったのである。


デザイナーだけではなく、ディーラーやジャーナリスト、カルテルを支える全ての人へのリスペクトを忘れない。金文字で名前が刷られた美しいネームカードからも、そんな気持ちの伝わるディナーだった。

一部の写真提供=Courtesy Salone del Mobile. Milano

取材・文=キッチン&インテリアジャーナリスト/本間美紀
Column by Miki Homma (Kitchen & Interior Journalist)


<プロフィール>
キッチン&インテリアジャーナリスト/本間美紀

早稲田大学第一文学部卒業後、インテリアの老舗専門誌「室内」の編集部に入社。独立後はインテリア、デザイン、キッチンを俯瞰した取材を続ける。著作に「リアルキッチン&インテリア」「人生を変えるインテリアキッチン」(いずれも小学館)など。ヨーロッパのインテリア、デザインの取材にも強く、イタリア・ミラノサローネ国際家具見本市、ドイツ・フランクフルトメッセなどの公式ジャーナリスト、海外ブランドの本社取材も多数。カルテルの取材は1990年代に始まる長年のカルテルウォッチャーでもある。2023年にはカルテルがメンバーでもある、イタリアブランドのラグジュアリー財団「アルタガンマ」の招待ジャーナリストとして選出される。

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