お堅いことで有名なアメリカの新聞「ニューヨークタイムズ」が、「デザイン界のレディ・ガガ」と紹介したほど、その個性と存在感は圧倒的である。もちろん、このフレーズには、時代の寵児といった意味もあるだろう。こう評されることをマルセルは、「誰にでも分かるように解説しているのだろう。ちょっとした名誉だね」と話す。そう、マルセル・ワンダースは、親しみを込めてファーストネームの「マルセル」で呼ばれるデザイナーである。この業界で「マルセル」と言ったら、誰もが知っているマルセル・ワンダースのことだ。
まず彼が注目される理由は、なんといってもそのルックスである。まるでモデルか映画スターのような外見だ。アメリカで、ファッションブランドGAPのモデルになったこともある。整った顔には、シミひとつない。身長196㎝の長身に、「週に3回はジムで体を鍛えている」スリムなボディ。食事にも気を遣い、「ベジタリアンではないが、できるだけ「ローフード(高温調理していない、野菜や生肉などを中心とした食事)をとるようにしている」とか。とても50代に見えない若々しさだ。「僕のデザインを買ってくれた人を、失望させたくないからね」と微笑む。
こうした華やかな見た目と裏腹に、マルセルは勤勉で勉強家でもある。なんといっても、デザイナーの業務をこなしながら、ヨーロッパで最も評価の高いフランスの大学院、インシアードで経済を学び、40代でMBAを取得しているのだから。実はmoooiを立ち上げる際、マルセルは、ビジネスマンのキャスパー・フィッサスと共同で事業を始めた。家具のデザインに経済的な思考も重要で、「デザイナーで経済を知らないのは罪だ」と語るほどである。学んだ経済の知識は、moooiのビジネスにも随分と役立っているようだ。もっとも、「経済だけじゃないよ。家では心理学や美術本、詩集などもよく読んでいる」と話すように、マルセルの関心の領域は広い。
moooiの家具は、こうしたマルセル・ワンダースの哲学や生き方が表れたものだ。彼の外見のように一目でカッコイイと思えるものから、ユニークなものまで、どれもが独自の世界観を持っている。だから、熱心なファンも多い。それだけではない。照明が素晴らしいのだ。21世紀になって、最も重要な照明を世に送り出しているのは、このブランドではなかろうか。
マルセル自身がデザインするだけでなく、若いデザイナーを積極的に登用しているのも moooiの特徴である。無名の若手がマルセルと出会い、眠っていた才能を開花させるのだろうか。日本人で初めて起用された三宅有洋は「コッペリア」を、30歳を過ぎたばかりのリック・テグラーは、メッシュのシャンデリアを発表して大きな話題となった。
他にも事例は多い。「(実物サイズの馬やウサギの照明で知られる)FRONTだって、『ロリータ』のニカ・ズパンクだって、今でこそ有名だが、見つけて最初に世に出したのは僕らなんだ。特に女性デザイナーに多くのチャンスを与えていることを忘れないで欲しい」。女性を積極的に登用しているのは、デザイン業界では珍しい、今の時代らしい対応である。
こうした様々なエピソードから、マルセル・ワンダースが唯一無二の存在であることが分かると思う。レディ・ガガのようなスターに例えられるのも、納得の話だ。moooiの人気の秘密は、このマルセルにある。
(取材・文・写真 ジョー スズキ)
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