LEDのシャンデリア、「コッペリア」でブレイクした三宅有洋(みやけありひろ)。ヘルシンキとミラノにスタジオを構えて活動しているデザイナーだ。彼の才能を見出したのは、moooiである。まだ無名だった三宅が、2009年にミラノサローネに出展した際、マルセル・ワンダースが声を掛けたのだ。
「町外れの、本当に小さなブースでした。そんな場所まで、本気で若い才能を見つけに来る企業なんて殆どありません。ところがサローネ終盤のある日、あのよく知ったマルセルの顔が僕のブースにあったんです。彼がしばらく作品を眺めているうちに、社長のキャスパー・フィッサスも合流し、言うんです。『うちで出さないか』と。まさかこんな一流ブランドと仕事ができるとは思っていなかったので、驚きました。正直、色々な会社からオファーを受けていたので悩んだものです。結局、予期せぬ方向に将来が展開しそうなmoooiを選びました」。
こうして生まれたのが、ミヤケランプ(日本未発売)だ。
「マルセルは、目が効く人ですね。この年は、無名だったニカ・ズパンクの『ロリータ』もサローネで見つけています。そして僕のような日本人で、しかもフィンランドで勉強したデザイナーから、FRONTやスタジオ・ジョブまで、全く違うスタイルのデザイナーを集めても、最終的にmoooi独自の世界観を作り上げているのですから」。
moooiから発表される製品のデザインは全て、マルセルとキャスパーの二人が決定してきた。面白いのは、同社への一回目の提案は、デザイナーの手書きのスケッチが条件であること。
何案も送られた中から光るアイディアを二人で見つけ、そのエッセンスを独特のスタイルに仕上げていくのがmoooi流だ。コッペリアもこうして生まれた。
「まず、LEDでしかできない照明を作りたいと考えました。かつての照明は電球にシェードを被せただけのシンプルなものです。それがLEDの登場で、格段にデザインの自由度が増しました。なかでもmoooiのシャンデリアのレイモンドは、LED照明の新しい方向を示したものです。さらにヘラクレウムが大ヒットし、小さなLED光源をいくつも散りばめたデザインが、moooiの照明スタイルとなっています。そして自分にも、同じようなアイディアがありました」。
「そもそも僕は、技術的なことを考えるのが大好きです。LED照明のデザインの醍醐味は、オリジナル光源を作れることでしょう。コッペリアの光源は一見シンプルですが、小さなLEDを透明な筒が囲み、さらにその周りを白い筒が囲んだものです。見かけによらず、複雑な構造なんですよ。これで、光が美しく広がります。フォルムは、多くの文化に共通する、ロウソクが並んだシャンデリアのイメージです」。
因みに「コッペリア」の名前は、有名なバレエ作品から来ている。機械的な動きをする、主人公のからくり人形の名前だ。バレリーナの軽く繊細な動きや、踊って舞い上がるチュチュ(バレエ用スカート)、指先が宙を切る様子を三宅は思い描いてデザインしたという。
「僕はよく、デザインをパスタの『アルデンテ』に例えています。アルデンテは、料理した瞬間ではなく、食卓に乗った瞬間が一番美味しい茹で具合です。コッペリアも、僕のデザインが完成した瞬間ではなく、皆さんの空間に置かれた時が一番美しいようにと考えています。きっと多くの空間にマッチすることでしょう」。
なるほど、これでコッペリアの多くの秘密が分かったものだ。と同時にデザイナーとしての三宅有洋の懐の深さを感じたものである。後に続く作品も非常に楽しみだ。
(取材・文・写真 ジョー スズキ)
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