デザインや機能性に優れ、時代を超えて愛される名作家具や照明たち。実用品を超えて芸術作品としても評価されています。
数ある名作の中から今回は、デザイン界の認識を揺さぶる革新的プロジェクト「アニマルシングス」をご紹介します。
アニマルシングス|Animal Things
デザイン:フロント|Front|スウェーデン
製造:モーイ|moooi|オランダ
2006年|照明・サイドテーブル
フロントがモーイのために発表したアニマルシングスシリーズは、2000年代初頭のデザイン界に大きな波紋を広げました。全高240cmのホースランプ、テーブル機能を持つピッグテーブル、そして愛らしいラビットランプ。これらは単なる動物モチーフの家具ではありません。実物大で再現された動物たちは、機能と形態の関係性について根本的な問いを投げかけます。デザイナーたちは当初から、この作品が「愛されるか、憎まれるか」という極端な反応を生むことを理解していました。その確信的な挑発性こそが、アニマルシングスの本質です。
ストックホルムを拠点とするフロントは、2003年に設立された女性デザイナー集団です。創設メンバーはソフィア・ラーゲルクヴィスト、アンナ・リンドグレン、シャルロッテ・フォン・デア・ランケン、カチャ・セーヴストレムの4名でしたが、現在はソフィアとアンナの2名で活動しています。
注目すべきは、スウェーデン出身でありながら、彼女たちが北欧デザインの主流から大きく逸脱していることです。デンマークの木工家具に代表される伝統的な職人技の継承でもなく、低価格で世界市場を席巻する大量生産型の実用主義でもない。フロントが選んだのは、デザインプロセスそのものを作品の物語として組み込む前衛的な第三の道でした。
彼女たちは動物に壁紙のパターンを作らせたり、モーションキャプチャ技術で空中に描いたスケッチを3Dプリントで具現化したりと、制作過程自体を作品の一部とする手法を確立してきました。アニマルシングスもまた、「動物が家具になる」というプロセスを文字通り可視化した作品です。
アニマルシングスシリーズの大胆さは、機能から出発するのではなく、「動物が家具になったら」という概念から出発している点にあります。この姿勢は、1980年代にエットーレ・ソットサスが率いたメンフィスグループが示した「形態は機能に従う」というモダニズム原則への挑戦と重なる部分があります。
ホースランプの漆黒の馬体には血管の筋まで精密に再現され、ラビットランプの毛並みは柔らかな光を反射します。このハイパーリアリズムと機能性の融合は、見る者に強烈な印象を残します。おとぎ話の召使いのように配膳する豚、居間を照らす馬。その光景は幻想的であると同時に、どこか不穏でもあります。これは、デザインに対する挑発であり、「問いかけるデザイン」の現代的な実践なのです。
フロントのシャルロッテ・フォン・デア・ランケンはかつてこう語りました。「私たちは常に『なぜそうするのか』を問います。安価な椅子を作る以外にも価値があるはずです」。この言葉は、効率や低価格を追求する大量消費型デザインへの明確な距離を示しています。
実物大の動物を空間に持ち込むという発想には、実は長い歴史があります。古代エジプトのスフィンクス型の椅子、バロック期の猫脚、獅子脚の家具たち、アール・ヌーヴォーの有機的な曲線。さらには、狩猟文化におけるトロフィー(剥製)も、実物大の動物が空間を支配してきた一例です。フロントのアニマルシングスは、こうした動物表現の系譜とはまったく異なる文脈で再解釈しています。
従来の動物モチーフが装飾的・象徴的であったのに対し、アニマルシングスは実物大という選択によって、より直接的で具体的な存在感を獲得しました。ここには北欧デザインの機能主義とも、スカンジナビアの伝統工芸とも一線を画す、実験的なアプローチが見て取れます。
重要なのは、これらを単なる奇抜なオブジェとしてではなく、空間の物語性を高める演出装置として理解することです。モダンでミニマルな空間にこそ、アニマルシングスの挑発的な存在感が際立ちます。
ホースランプは広いエントランスホールや吹き抜けのあるリビングに配置することで、空間に劇的なアクセントをもたらします。ラビットランプはベッドサイドや書斎の一角に置けば、親密な雰囲気を演出できるでしょう。ピッグテーブルはダイニングやラウンジスペースで、ユーモラスな会話のきっかけとなります。
フロントのアニマルシングスシリーズは、デザインとは何かという本質的な問いを投げかける作品です。実物大の動物を家具化するという大胆な試みは、機能と形態、伝統と革新、美と違和感の境界線を曖昧にします。北欧の伝統から距離を置き、機能主義を超えた概念的アプローチを選択したフロント。愛するか憎むか、その両極端な反応こそが、この作品の成功を証明しています。デザインは時に、私たちの常識を揺さぶる鏡でなければならない――フロントはそう語りかけているようです。
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